the band apart 「謎のオープンワールド」のレビュー【昔のバンアパが帰ってきた?!】
バンアパはキャッチーでオシャンティーだった
バンアパを知っている人に「バンアパの代表曲は?」と聞けば、90%くらいの人は「Eric.W」と答えます。「Fool Proof」と答える人もいるかもしれません。
ファンキーな伴奏が心地よく、テクニカルなギターも印象的で、サビのメロコアっぽいバンドサウンドも心地よく仕上がっています。それだけ「Eric.W」は有名だし、キャッチーで耳に残る曲でした。
難解になったバンアパ
そんな感じの「おしゃれなメロコア」でデビューしたバンアパでしたが、最近では本当に音楽性が多様になってきました。
わたしは、ここ数年のバンアパは「聴きにくくなった」と感じていました。
ベースはブリブリ、ギターは変な音、ドラムも難解になっています。ボーカルも楽器の音に埋もれがちでした。確かにおしゃれでかっこいいです。しかし各自の自己主張が強く、例えるなら「いろんな味のふりかけを同時にかけたご飯」みたいな状態でした。
そして、2011年まではひたすら英語詞の曲を歌ってきたボーカルの荒井さん。2012年から日本語の歌詞を解禁しました。日本語になったのはいいものの、歌詞がそんなにいいとは言えませんでした。まだ日本語の歌詞に恥ずかしさがあるのか、2013年のアルバム「街の14景」では、なんか違和感がありました。荒井さんには悪いですけど、英語もだった時もそんなに発音は良いとは言えませんでした。
キャッチーになったニューアルバム
そして1月21日、7枚目のフルアルバム「謎のオープンワールド」が発売されました。わたしは早速買ってきて聴いてみました。
まず最初の感想は「キャッチーで聴きやすくなった」ということです。
聴かせるポイントを絞り込んで、シンプルにアレンジしています。
1曲目の(opening)が終わると、2曲目の「笑うDJ」で、のっけから引き込んできます。硬質なギターのカッティングが心地よく、かつてのキャッチーで心地よいバンアパが戻ってきた!と思いました。
3曲目の「ピルグリム」は、イントロは最近のバンアパによくある感じですが、サビのエイトビートに合わせて弾かれるギターとベースが癖になります。この曲はドラムのパターンも心地よいです。
4曲目の「廃棄CITY」はアメリカン・ロックっぽい一曲です。出だしのごちゃごちゃした感じが、サビで綺麗にまとまったロックサウンドに変わるのが気持ちいいです。
5曲目はチップチューンの(save point A)です。このアルバムでは電子音の曲?をちょいちょい挟んできます。
6曲目の「禁断の宮殿」はとてもいいメロディで耳に残ります。「耳が腐る」という強烈なフレーズがさり気なく歌われています。おもしろいなあ。
7曲目「殺し屋がいっぱい」は、シンプルでポップな曲です。サビのコーラスがバンアパらしくないというか、新鮮でした。
8曲目「遊覧船」はオーガニックな雰囲気の漂う曲です。伴奏とボーカルが良く調和していて、とても聴きやすいです。
9曲目「月と暁」は、ストレートなロックチューンです。こういう普通のロックバンドっぽい曲もバンアパでは珍しいですよね。
10曲目は再び電子音の(save point B)
11曲目は「裸足のラストデイ」
とってもきれいなメロディで、さわやかな曲ですが、サビで「気違い」を連呼しています。メロディが際立つ心地よいアレンジになっています。
12曲目の「消える前に」は、これまた今までのバンアパにはない感じの曲です。
独特のドラムのパターンが面白いです。エモいのか?
13曲目の「最終列車」は、とりわけメロディアスなバラード曲です。リード曲でも良さそうな曲ですが、この曲でアルバムを締めくくるというのもいいですね。
最後に(ending)で、電子音の「最終列車」が流れて終劇です。
バンアパの新境地
今回のアルバムでは曲作りのスタイルを変えて、昔みたいに「みんなで一緒に作る」というスタイルにしたようです。ミックスの仕方も前とは変わっています。
そして出来上がった「謎のオープンワールド」。何回も聞きたくなる素晴らしいアルバムに仕上がりました。
確実にメロディーは昔より良くなっています。そしてアレンジもよりシンプルになっています。曲をごちゃごちゃにせずに、「引き算」することを覚えたのではないでしょうか。